
バベルの塔
1563年
バロック以前
ピーテル・ブリューゲル(父)「バベルの塔」1563年頃|油彩・板 114 × 155 cm|ウィーン美術史美術館蔵
「バベルの塔」は、旧約聖書の創世記に登場する伝説の塔をモチーフにした作品だ。
神に近づこうと天まで届く塔を建てようとした人間たちに、神は怒り、彼らの言語をバラバラにして世界中に散らしたという物語。
ブリューゲルが描いたのは、まさにその建設の最中だ。螺旋状にそびえ立つ巨大な塔は、すでに雲の上まで達しているように見える。
しかし塔はどこか歪で、完成には程遠い。画面の隅々には無数の人間が描かれ、石を運び、足場を組み、それぞれの仕事に没頭している。
ブリューゲルはこの題材を複数回描いており、現存するものでは「大バベル」(ウィーン版)と「小バベル」(ロッテルダム版)が知られている。
当時のネーデルラント(現在のベルギー・オランダ周辺)は商業・文化の中心地として栄えており、巨大な建造物が次々と建てられた時代でもあった。
この絵には、人間の傲慢さへの警告とともに、創造することへの敬意も込められていると言われている。
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美術館でこの絵の前に立ったとき、私が感じたのは「圧倒」という一言だった。
完成するかもわからない塔に向かって、それでも積み上げ続ける人間たちの姿。
神に届こうとする無謀さと、そこに宿る純粋な衝動
それはどこか、音楽や芸術を続けることと重なって見えた。
