創刊号|バベルの塔とモーツァルト——音楽が自由だと知った日

出会い問いかけ古典派

創刊号|バベルの塔とモーツァルト——音楽が自由だと知った日

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト

2026.4.17

モーツァルト ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219「トルコ風」 1775年作曲

これはMusicStoryの創刊号です。

いつもは同時代の音楽と絵画をペアにしてお届けしますが、

この最初の一本だけは、私自身の話をさせてください。

寄り道した日のこと

バベルの塔

2017年の秋。大阪・中之島の国立国際美術館に、私は学校帰りに友達と寄り道した。

当時は寄り道禁止だったけど、「行こう」と誘われてワクワクしながらついていった。
制服のまま美術館の中に入った。

そこで出会ったのが、ブリューゲルの「バベルの塔」だった。

巨大な螺旋の塔が、雲を突き抜けようとしている。
無数の人間が、その壁にへばりついて、それぞれの仕事をしている。

完成するかどうかもわからないのに、誰もが必死に何かを積み上げている。

なんでこんなに惹かれるんだろうと思った。

言葉にならないまま、ただじっと見ていた。

これが初めて私が美術館に行った日のことだった。

音楽が楽しくなかった頃

飛行機の上からの写真

それから数年後、私は一人でドイツのワイマールにいた。

大学受験に失敗した後だった。浪人か、それとも別の道か、答えが出ないまま、マスタークラスに申し込んで、飛行機に乗った。

当時の私は、音楽が楽しいと思えなくなっていた。

コンクール、受験、評価、順位…

気づけば音楽はずっと「勝負の場」だった。
弾くたびに誰かと比べて、弾くたびに自分の足りなさを突きつけられる。

「音楽ってこんなに苦しいものだったっけ」とずっと思っていた。

チェンバロの上においてあるバイオリン

あるクラスコンサート。

デンマークから来た女の子が、モーツァルトの『ヴァイオリン協奏曲第5番』を弾き始めました。

最初の一音で、何かが変わった。

彼女はただ、音楽を楽しんでいた。
舞台の上で、本当に自由に、嬉しそうに弾いていた。

「音楽って、こんなに自由でよかったんだ」

強張っていた肩の力がふっと抜け、世界が少しだけ明るく見えました。

創ることへの衝動

ウィーンで見た絵画

なんとなく流れていく毎日に、心に残る芸術の物語を。

バベルの塔のことを、そのとき思い出した。

あの絵の中の人たちも、きっと誰かに勝つために塔を建てていたんじゃない。
ただ、届かないとわかっていても、何かを創りたかったんじゃないか。

人間って、ずっとそうやってきたんだと思う。

音楽でも、絵でも、言葉でも 誰かに認められなくても、記録に残らなくても、ただ何かを創ろうとする。

その衝動が、人間らしさの核なんじゃないか。

ウィーンで見た絵画

AIが何でもできる時代だからこそ、私は人間が創ったものに目を向けたい。

人間の手と心で創ったものには、その人の時間と感情が宿っている。
それだけは、代わりにはなれない。

あなたも、何かを創ってみてほしい。

音楽でも、詩でも、手紙でも、絵でも。

「何かをこの世界に残すこと」

それが今、私たちにできることだと信じているから。

芸術は、自分との対話

ウィーンで見た絵画

絵画を見ていると、今の自分を見つめている感覚になる。音楽も同じ。

芸術には正解がないからこそ、自分との対話で生まれる、唯一無二のストーリーがある。

昔見たあの絵画が、今見ると違って見える。

経験を積んで、色々なものに触れたから、また違う何かが生まれる気がする。

そしてまた、あの絵に会いたい。

バベルの塔にまた会える日まで、日々研鑽を積もうと思います。

あなたと一緒に、物語を綴りたい

芸術に正解はありません。

17歳の私が見た景色と、今の私が見る景色が違うように、あなたと芸術の出会いにも、あなただけのストーリーがあるはずです。

この場所は、私の大好きなものを詰め込んだ宝箱です。

ぜひ、あなたの感じたことをノートに残してください。

正解を求める必要はありません。


あなたの言葉で、あなたの物語を。

バベルの塔の住人のように、一緒に新しい何かを積み上げていきましょう。

なんとなく流れていく毎日に、心に残る芸術の物語を。

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あなたのノート

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美術手帳に書き留めておきましょう。

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