これはMusicStoryの創刊号です。
いつもは同時代の音楽と絵画をペアにしてお届けしますが、
この最初の一本だけは、私自身の話をさせてください。
寄り道した日のこと

2017年の秋。大阪・中之島の国立国際美術館に、私は学校帰りに友達と寄り道した。
当時は寄り道禁止だったけど、「行こう」と誘われてワクワクしながらついていった。
制服のまま美術館の中に入った。
そこで出会ったのが、ブリューゲルの「バベルの塔」だった。
巨大な螺旋の塔が、雲を突き抜けようとしている。
無数の人間が、その壁にへばりついて、それぞれの仕事をしている。
完成するかどうかもわからないのに、誰もが必死に何かを積み上げている。
なんでこんなに惹かれるんだろうと思った。
言葉にならないまま、ただじっと見ていた。
これが初めて私が美術館に行った日のことだった。
音楽が楽しくなかった頃

それから数年後、私は一人でドイツのワイマールにいた。
大学受験に失敗した後だった。浪人か、それとも別の道か、答えが出ないまま、マスタークラスに申し込んで、飛行機に乗った。
当時の私は、音楽が楽しいと思えなくなっていた。
コンクール、受験、評価、順位…
気づけば音楽はずっと「勝負の場」だった。
弾くたびに誰かと比べて、弾くたびに自分の足りなさを突きつけられる。
「音楽ってこんなに苦しいものだったっけ」とずっと思っていた。

あるクラスコンサート。
デンマークから来た女の子が、モーツァルトの『ヴァイオリン協奏曲第5番』を弾き始めました。
最初の一音で、何かが変わった。
彼女はただ、音楽を楽しんでいた。
舞台の上で、本当に自由に、嬉しそうに弾いていた。
「音楽って、こんなに自由でよかったんだ」
強張っていた肩の力がふっと抜け、世界が少しだけ明るく見えました。
創ることへの衝動













