フランス
アレクサンドル・カバネル
Alexandre Cabanel
1823 – 1889
19世紀フランス美術界の頂点に立った、アカデミック絵画を代表する巨匠。
パリの国立美術学校(エコール・デ・ボザール)で学んだ後、ローマ賞を受賞してイタリアへ留学し、ミケランジェロやラファエロなどルネサンスの古典芸術から多大な影響を受けた。
神話や歴史、宗教を題材とした作品を数多く手がけており、とりわけ1863年のサロンで発表した代表作《ヴィーナスの誕生》は、皇帝ナポレオン3世に買い上げられるほどの絶賛を浴び、彼に確固たる名声をもたらした。
筆跡を感じさせないほど滑らかで緻密な「アカデミック・フィニッシュ」と呼ばれる技法や、計算し尽くされた安定感のある構図、そして柔らかな光の演出によって、対象を徹底して美しく理想化して描くスタイルが最大の特徴。
また、神話画だけでなく肖像画家としても絶大な人気を誇り、対象の気品やエレガンスを引き出す手腕から、ヨーロッパの貴族階級やアメリカの新興富裕層の女性たちから数多くの制作依頼を受けた。
さらに、美術学校の教授として長きにわたり教壇に立ち、弟子それぞれの個性を尊重する柔軟な教育方針で、後の美術界を担う多彩な才能を世に送り出したことでも知られている。

