The Fallen Angel(堕天使)
1847年
ロマン主義悪魔
ギリシャ彫刻のように美しく均整のとれた裸体の青年が、岩場に身を横たえながら、こちらを射抜くような鋭い視線を向けている。 顔を覆い隠すように強く組まれた腕の奥では、その瞳からひとしずくの大粒の涙がこぼれ落ちようとしている。
彼の正体は、神に反逆し天界から追放されたばかりの堕天使、ルシファー(サタン)。 背後の明るい空で歓喜に舞い踊る天使たちとは対照的に、彼が堕とされた世界は暗く沈んだ影に包まれている。
実はこの絵が描かれた当時、フランスの保守的な美術界において「悪魔」を絵画の主題に選ぶこと自体が極めて異例であり、作品を目にした審査員たちに大きな衝撃を与えた。 作者のカバネルは当時弱冠24歳。エリートの登竜門であるローマ賞を受賞して滞在していたイタリアで、ジョン・ミルトンの叙事詩『失楽園』にインスピレーションを得てこの野心作を描き上げた。
彼は悪魔を醜い化け物としてではなく、非の打ち所がないほど美しく若々しい姿で表現した。 その瞳に宿るのは、すべてを失った悲しみだけではない。燃え上がるような怒り、神に対する消えることのない反逆心、そして今にも牙を剥きかねないほどの張り詰めた緊張感が生々しく入り混じっている。
古典的な「完璧な美」の中に、荒々しく深い「情念」を閉じ込めたこの作品は、その美しさゆえに、見る者の心を強く揺さぶり続けている。
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19世紀フランス美術界の頂点に立った、アカデミック絵画を代表する巨匠。








