Souvenir de Mortefontaine(モルトフォンテーヌの想い出)
1864年
霧帰れない場所バルビゾン派
銀灰色にけむる静かな水辺に、斜めに傾き葉を広げる大きな木々。
その木の下で枝に手を伸ばす女性と、寄り添う子供たちの姿が、かすかな光の中に浮かび上がる。
どこか夢の中のような、静寂と詩情にあふれる風景。
だが実は、これは現実の景色をありのままに写し取ったものではない。
画家コローは1850年代、パリ北部の小さな村モルトフォンテーヌを度々訪れ、水面に反射する光や大気の揺らぎを熱心に研究していた。
この絵は、彼がかつてその地で見た美しい光景を、アトリエで彼自身の「記憶」というフィルターを通して再構築した世界なのだ。
自然の移ろいゆく儚い美しさに対する、彼の深い愛情とノスタルジー。
記憶の中で純化されたこの風景は、単なる写生を超え、自然の儚さと大切さを私たちに静かに語りかけてくる。
この幻想的で優しげな作品は、発表された1864年のサロンで皇帝ナポレオン3世の心を深く捉え、直接買い上げられることとなる。
彼がキャンバスに閉じ込めた薄絹のような柔らかな光は、今もなお、見る者を静かな追憶の世界へと優しく誘ってくれる。
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19世紀フランスを代表する画家であり、バルビゾン派の中心的な存在である。



