Group IX/SUW, The Swan, No. 1(第9群 SUW、白鳥 第1番)
1915年
抽象二元性
真っ二つに分断された白と黒の空間。そこでくちばしを合わせる、白鳥と黒鳥。
一見すると、鏡合わせのような美しいシンメトリー。しかし実は、これは「対立」と「統合」がぶつかり合う、静かで激しいエネルギーの交差点である。
この絵が描かれた1914年から1915年、世界は第一次世界大戦の混沌と殺戮の渦中にあった。
窓の外で引き裂かれていく現実世界を前に、画家ヒルマ・アフ・クリントはアトリエにこもり、分断された世界を再び結びつけるような壮大なテーマに向き合っていた。
白と黒の白鳥は、光と影、生と死、物質と精神、そして男性性と女性性という、この世のあらゆる「二元性(相反する要素)」の象徴だ。
よく見ると、白の白鳥の足やくちばしには「女性性」を示す青が、黒の白鳥には「男性性」を示す黄色が配されており、互いの中に相反する性質を内包していることがわかる。
彼女は、錬金術や神秘思想における「相反するものが結びつき、新たな高み(黄金)を生み出す」という奇跡を、この2羽の鳥に託したのだ。
絶望的な戦火の時代に彼女がキャンバスの上に描き出したのは、対立する者同士が傷つけ合いながらもやがて幾何学的な抽象へと溶け合い、ひとつの純粋な光へと昇華していく「宇宙の究極の調和」への祈りだったのかもしれない。
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スウェーデンを代表する女性画家。ストックホルムの王立美術アカデミーで学び、初期は風景画や肖像画、植物画の分野で確かな技術を持つプロの画家として活躍した。



