On Lake Attersee(アッター湖)
1900年
水面抽象
穏やかに揺れる波間に反射する光と雲の影。まるでモザイクのように無数の色面が散りばめられた湖面。
空や周囲の景色をあえて排除し、ただひたすらに水面の表情だけを正方形のキャンバスへと切り取った、大胆かつ静謐な風景画。
でも実は、この絵が描かれた1900年当時、画家クリムトは激しい非難の嵐の渦中にいた。
ウィーン大学から依頼された巨大な天井画の制作に取り組んでいたが、そのあまりにも前衛的で赤裸々な表現が大スキャンダルを巻き起こし、保守的な批評家や大衆から猛バッシングを浴びていたのだ。
息苦しい都会での論争から逃れるように、彼はこの年の夏、初めてアッター湖畔を訪れる。 ゆったりとした作業用のローブを身にまとい、ボートに揺られながら、厚紙をくり抜いて作った自作の正方形ファインダー越しに水面を覗き込んだ。
誰かの期待に応えるためではなく、ただ自分自身の心を満たし、独自のビジョンを追求するためだけに描かれたこの水景画は、驚くほど抽象的で、豊かな色彩に満ち溢れている。
世間の喧騒に疲れ果てた彼を救い、新たな芸術表現へと導いたのは、湖畔の静寂と、光り輝く水面の美しさだったのかもしれない。
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19世紀末から20世紀初頭にかけて活躍したウィーンを代表する象徴主義の画家であり、新しい芸術を模索する「ウィーン分離派」の創設メンバーおよび初代会長。







