Sagrada Familia del pajarito(小鳥のいる聖家族)

1650年

温もり家族バロック

小鳥を高く掲げて、無邪気に白い子犬と遊ぶ幼い男の子。

その様子を仕事の手を止めて優しく見守る父親と、傍らで糸を紡ぎながら微笑む母親。

薄暗い大工場のなかに満ちているのは、どこにでもあるような温かく穏やかな家族の日常風景だ。

でも実は、描かれているのはただの家族ではなく、キリストと聖母マリア、そして養父ヨセフの「聖家族」である。
この絵が描かれた1650年頃、画家ムリーリョが暮らしていたスペインのセビリアは、深い悲しみと絶望の只中にあった。

前年に街を襲ったペストの大流行により人口の多くが失われ、社会は死と隣り合わせの喪失感と経済的な衰退に喘いでいたのだ。

そんな過酷な時代に、ムリーリョはあえて神々しい後光や非現実的な奇跡を描かなかった。

代わりに、伝統的な宗教画では脇役にされがちだった父親ヨセフを構図の中心へと引き出し、子煩悩で人間味あふれる保護者として描いている。

無邪気なキリストが手にする小鳥やマリアが紡ぐ糸は、のちに彼が背負う「受難(生贄)」や「運命の糸」を密かに暗示する暗い象徴でもある。

けれども、明暗の強い劇的な光に照らされて浮かび上がる彼らの姿は、えも言われぬ親愛の情に包まれている。

死の恐怖と貧困に打ちのめされていた当時の人々を救ったのは、手の届かない遠い神の威光ではなく、この絵に描かれたような「ありふれた家族の愛と温もり」という、何よりも尊い日常の美しさだったのかもしれない

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17世紀スペイン黄金時代を代表する、セビリア出身のバロック画家。

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