Les hasards heureux de l'escarpolette(ぶらんこの絶好のチャンス)

1768年

ロココ

1767-1768年

うっそうと茂る緑の庭園に差し込む、輝くような木漏れ日。 宙を舞うふわりとしたピンク色のシルクドレスと、空に向かって無邪気に放り出された小さな靴。

一見すると、美しい自然の中で遊びに興じる貴婦人を描いた、ただただ優雅でロマンティックな風景。 でも実は、この絵の裏側には、当時の社会の道徳観を揺るがすほどの過激な「スキャンダル」が隠されていた。

この絵の注文主である裕福な貴族が求めたのは、自らの愛人がブランコに乗り、そのスカートの中を茂みの下から覗き込む自分自身の姿を描くことだった。さらには、愛人の背後でブランコを押す役には、あろうことか高位の聖職者である司教を指名したのだ。

あまりに不道徳で危険な要求に、最初に依頼を持ちかけられた画家は恐れをなして断ってしまった。そこで白羽の矢が立ったのが、画家フラゴナールである。

当時の彼は、格式高い歴史画家としてのエリートコースを歩んでいたものの、王室からの報酬の遅れやアカデミーの堅苦しい制約に限界を感じ、画家としてのキャリアの岐路に立たされていた。 そんな彼にとって、この突拍子もない依頼は自らの殻を破る大きな転機となる。

彼はブランコを押す役を司教から「何も知らない夫」へと巧みに変更し、ただの卑猥な絵画ではなく、洗練された極上の芸術へと昇華させた。 秘密の恋をそそのかすように唇に指を当てるキューピッドの彫像や、不貞の危機を察知して激しく吠える足元の小さな白い犬など、画面のあちこちに愛の駆け引きを暗示する暗号を忍ばせたのだ。

アカデミーの重圧から自らを解放し、新しいスタイルへと踏み出した彼がキャンバスに描き出したのは、暗い背徳感など微塵も感じさせない、驚くほど軽やかで生命力に満ちた愛の喜びだった。

息苦しい社会の縛りやキャリアの壁にぶつかっていた彼を解き放ったのは、古い権威を笑い飛ばすような、人間の抑えきれない情熱と自由な遊び心だったのかもしれない。

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18世紀のフランス美術を代表するロココ期の巨匠。南仏のグラースに生まれ、パリでジャン・シメオン・シャルダンやフランソワ・ブーシェといった著名な画家たちのもとで修…

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