Sappho(サッフォー)

1884年

アカデミック美術

三日月がほのかに浮かぶ夜空を背景に、白いドレスを身にまとい、傍らに竪琴(リラ)を置いて静かにうつむいて座る女性。

滑らかな肌や端正な顔立ちが際立つ、理想化された美しさを湛える一枚。でも実は、彼女の心のうちは、この絵の静謐さとは裏腹に深い絶望で満たされている。

彼女のモデルは、古代ギリシャで愛と情熱を謳い上げた実在の天才女性詩人、サッフォー。伝説によると、彼女は美青年ファオンへの報われない恋に深く苦しみ、やがて岩場から海へと身を投げてしまうという悲劇的な最期を遂げる。

だらりと下げられた両腕と、どこか思い詰めたように伏せられた視線。それは、燃え上がるような激情の果てに、自ら命を絶つ決意を固めた直後の姿を暗示している。

人物画の名手ルフェーブルが緻密な筆致で描いたこのサッフォーは、取り乱して泣き叫ぶどころか、驚くほど洗練された静けさに包まれている。

愛の苦しみのどん底にいた彼女の悲劇性を永遠の美しさへと昇華させたのは、死の直前にだけ訪れる、この静寂に満ちた佇まいだったのかもしれない。

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19世紀フランスにおけるアカデミック美術を代表する人物画家。エコール・デ・ボザール(官立美術学校)にてレオン・コニエのもとで腕を磨き、1861年に『プリアモスの…

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