Two Men Contemplating the Moon(月を眺める二人の男)
1830年
ロマン主義
1825-30年頃
夕闇が迫る山道で、寄り添うように立ち止まり、静かに輝く三日月を見つめる二人の男。
鬱蒼と茂る常緑樹と、根を剥き出しにして今にも倒れそうな枯れたオークの木に囲まれた、神秘的で少し不気味な夜の森の風景。でも実は、この絵には画家フリードリヒの深く切ない「友への追憶」が込められている。
絵の右側に立つのは画家フリードリヒ自身。そして彼に肩を預ける左の青年は、この絵が描かれる数年前、28歳という若さで病死してしまった愛弟子のアウグスト・ハインリヒだと言われている。
さらに彼らが身にまとっているマントやベレー帽は、当時の保守的な政府から「反逆のシンボル」として着用を禁じられていた「古ドイツ服」。
厳しく自由が弾圧される社会の中で、同じ思想を抱き、芸術を語り合ったかけがえのない友。彼を失った悲しみの中で、フリードリヒはかつて二人で共に歩いた夜の山の散歩の思い出を、キャンバスの上に永遠に刻み込んだのだ。
倒れそうな枯れ木は「死」や「人生の儚さ」を暗示しているが、彼らが見つめる先にある美しい月や常緑樹は、画家の信仰において「永遠の命への希望」や「救済」を意味している。
親しい友を失った深い喪失感のなかで彼が描いたのは、絶望の闇ではない。それは死を乗り越えた先にある温かい光と、決して色褪せることのない二人の絆を静かに確認し合う、祈りに満ちた風景だったのかもしれない。
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