The Port of Saint-Tropez(サントロペの港)
1893年
照りつける太陽の下、真っ白な帆を張った赤いヨットが停泊するサントロペの港。
岸辺の店先には地元の人々がのんびりと行き交い、遠くにはアサンプション教会の鐘楼が青空に向かってそびえ立つ。
地中海の陽光あふれる平和な日常風景。しかし、この作品は画家マクシミリアン・リュスにとって、これまでの自分を根底から覆す「光との遭遇」の証だった。
労働者階級の出身で、社会の底辺に生きる人々に共感を寄せていたリュス。
それまでの彼は、夜の闇に沈むパリの街や、霧に煙る陰鬱なロンドンの風景など、どこかメランコリックで暗い色調を好んで描いていた。
そんな彼に大きな転機が訪れたのは1892年の夏。友人である画家ポール・シニャックに招かれ、初めて南仏サントロペの地を踏んだ時のことだ。
そこで彼を待っていたのは、パリやロンドンとはまるで違う、暴力的で強烈な地中海の光だった。
霧と闇を描いてきた画家は、この新しい世界にすっかり魅了される。
彼は得意としていた紫や藤色を影の部分に忍ばせ、そこに太陽がもたらす鮮やかなオレンジ色を対比させることで、南仏特有のまばゆい輝きを見事にカンヴァスへと焼き付けた。
さらに、当時の仲間たちが実践していた几帳面で均一な点描のルールをあえて崩し、感情の赴くままに点の大きさを変えることで、計算だけでは生まれない生き生きとした画面の鼓動を生み出している。
暗がりを見つめ続けてきた男が、眩いばかりの色彩と光の喜びに目覚めた瞬間。
この輝く港の風景には、南仏の太陽によって画風を大きく開花させた画家自身の、静かで熱い昂ぶりが満ちあふれている。
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フランスの新印象派(ネオ・印象派)を代表する画家。パリの質素な家庭に生まれ、初期は版画職人の見習いとして技術を磨いた。
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