The Yellow Tulip(黄色いチューリップ)

1902年

穏やかさアメリカ印象派

閉ざされたカーテンの奥でありながら、部屋全体が夏の陽だまりのような温かく黄金色の光に包まれている。

床に座り込んだ上品な装いの若い女性が、青と白のデルフト焼の花瓶から伸びる黄色いチューリップをそっと覗き込んでいる。

彼女は目の前の花にすっかり心を奪われており、まるでこの部屋に自分以外の誰かがいることすら気づいていないかのようだ。

1902年頃に描かれた本作は、アメリカ人画家フリーゼケがフランスに渡ってプロとして歩み始めた初期の代表作である。

恩師ホイッスラーから学んだ静かで調和のとれた色調の世界から、後に彼自身の代名詞となる明るく華やかな印象派のスタイルへと移り変わる、まさに画家の過渡期を切り取った一枚だと言える。

確かなデッサン力による人物描写に、アール・ヌーヴォーを思わせるしなやかな曲線、そして浮世絵のように切り取られた構図など、当時のさまざまな芸術様式が見事に融合されている。

実はこの絵の中で、はっきりとした「黄色」が使われているのは、ほぼチューリップの花びらだけである。

それにもかかわらず、空間全体がまばゆい輝きを放って見えるのは、日常のふとした感覚的な喜びをカンヴァスに定着させる彼の卓越した表現力によるものだ。

「太陽の光と花、そして女性を描くことだけに関心がある」と語り、生涯をかけて光を追い求めたフリーゼケ。

彼にとってこの一輪の黄色いチューリップは、閉ざされた室内に永遠の夏をもたらしてくれる、小さな「太陽」そのものだったのかもしれない。

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アメリカ印象派を代表する画家の一人。ミシガン州に生まれ、シカゴやニューヨークで美術を学んだ後、1898年にフランスへ渡り、生涯の大部分を同国で過ごした。

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