Flaming June(燃え上がる6月)
1895年
透き通るような鮮やかなオレンジ色のドレスに身を包み、大理石のテラスで身を丸めてまどろむ美しい女性。
背後には太陽の光を反射してきらめく地中海が広がり、画面全体がうだるような夏の熱気と官能的な美しさに包まれている。
神話や宗教といった特定の物語を描いたものではなく、ただひたすらに「芸術のための芸術」を追求した唯美主義の最高傑作だ。
しかし実は、このまばゆいばかりの生命力に溢れた絵が描かれた時、画家レイトンは重い心臓病を患い、自らの死期が近いことを悟っていた。
ヴィクトリア朝の芸術において、穏やかな眠りはしばしば「死」の隠喩として描かれる。 彼女の頭上にそっと添えられたキョウチクトウの花は、美しい見た目と甘い香りを放つ一方で強い毒性を持ち、当時の詩などにおいて「危険」や「死」を象徴する植物だった。
病に蝕まれながらも、彼が最後の力を振り絞って描き上げたこの作品は、事実上彼の最後の完成作となった。 死の足音が近づく中で老画家がキャンバスに焼き付けたのは、暗い絶望ではなく、永遠に続くかのような静かな眠りと、それに抗うかのように燃え上がる圧倒的な「生」の輝きだったのかもしれない。
さらに、この作品自体も数奇なドラマを持っている。 画家の死後、美術の流行が変わり完全に忘れ去られてしまったこの絵は、1960年代にロンドン郊外の解体中の家の羽目板の裏から発見され、当時は絵画そのものよりも額縁の方が価値があるとして、わずかな値段で売りに出された。 しかしその後、プエルトリコの実業家に見出されて大西洋を渡り、奇跡的な復活を遂げた現在では「南半球のモナ・リザ」と称賛されるほどの熱狂的な人気を集めている。
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ヴィクトリア朝の画壇に君臨したイギリスの巨匠にして彫刻家。王立芸術院(ロイヤル・アカデミー)の会長を長年務め、イギリスの画家として史上唯一、貴族(男爵)の称号を…
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