Le Port de Saint-Tropez(サントロペの港)

1905年

フォーヴィスム(野獣派)

南仏の眩しい太陽の下、白い帆を休める船と、水辺を行き交う人々の姿。

港の目の前にあるホテルの一室から見下ろした、小さな漁村の飾らない日常風景。

しかし実は、この絵が描かれた1905年の夏、こののどかな港町は若き画家たちのすさまじい熱気に包まれていた。

親友のアンリ・マンガンやシャルル・カモアン、そしてポール・シニャックらが集結し、後に「フォーヴィスム(野獣派)」と呼ばれることになる、強烈な色彩による絵画革命の火蓋が切られようとしていたのだ。

仲間たちが丘の上の見晴らしの良い別荘に滞在し、燃え上がるような色彩で南仏の自然を描き出す中、マルケだけは「港から遠すぎる」と不満を漏らし、一人だけ海沿いのホテルに部屋を取った。

仲間たちとの熱い芸術談義や、夜の街での享楽的な時間を共に楽しみながらも、彼が本当に愛したのは、目の前で静かに揺れる水面と、船乗りたちの何気ない営みだった。

周囲の画家たちが原色をぶつけ合うような激しい情熱に身を焦がす中でも、彼だけは自分を見失うことなく、どこか冷静で詩的なまなざしで目の前の景色を見つめ続けた。

熱狂の渦の中心にあっても決して流されず、水辺の穏やかな調和を描き出そうとした画家の、静かで揺るぎない意志が込められた一枚である。

内容に誤りがある場合は こちらからご報告ください

フランス

アルベール・マルケ

1875 – 1947

フォーヴィスム(野獣派)の運動に加わりながらも、独自の穏やかな画風を確立したフランスの画家。アンリ・マティスやラウル・デュフィらと親交を深め、共に制作を行った。

あなたのノート

この絵画から感じたことを、美術手帳に残しておきましょう。

ノートを書くには登録が必要です。

無料で登録する

音楽とアートの物語が、
毎日あなたの元へ。

感じたことを、ノートに書き留めよう。
積み重なるほど、
音楽とアートへの解像度が上がっていく。

無料登録で読む