On the River(川にて)

1910年

静けさアメリカ印象派記憶

c. 1908-1910

緑深きエプト川に浮かぶ小舟の上で、静かにくつろぐ一人の女性。

水面には生い茂る木々が鏡のように映り込み、本来ならば茶色いはずのボートまでが、魔法にかけられたように鮮やかなエメラルドグリーンに染まっている。

画面全体を覆い尽くすような緑の交響曲の中で、ひときわ目を引くのが、女性が差す黄色い日傘と、キモノ風のドレスだ。

この絵のモデルは、画家の最愛の妻であり芸術的パートナーでもあったセイディ。 一見すると、ただ穏やかで美しいだけの装飾的な風景画に見えるかもしれない。

しかし、画家フリーゼケがこの「永遠の夏」とも呼べる世界を描き出す背景には、彼なりの息苦しさからの解放があった。

彼が生まれ育った当時のアメリカは、ピューリタン的な厳格な道徳観が根強く残る社会だった。

彼が心から描きたかった「さんさんと降り注ぐ太陽の光と、その下で自由に振る舞う女性の姿」を、ありのままに追求できる空気ではなかったのだ。

故郷の窮屈な制約から逃れるようにフランスへと渡り、モネも暮らしたジヴェルニーに居を構えた彼は、まるで自分だけの楽園を築き上げるかのように、このまばゆい光の世界をカンヴァスに定着させていった。

画面の中央で小さな太陽のように輝く黄色い日傘は、単なる小道具ではなく、彼が何よりも渇望した「光」そのものの象徴である。

深い緑に包まれたこの穏やかな川辺は、彼が遠い異国の地でようやく見つけ出した、絶対的な自由と安らぎの聖域だったのかもしれない。

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アメリカ印象派を代表する画家の一人。ミシガン州に生まれ、シカゴやニューヨークで美術を学んだ後、1898年にフランスへ渡り、生涯の大部分を同国で過ごした。

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