The Waltz(ワルツ)
1891年
華やかなパリの社交界、光にあふれる大舞踏会から少し離れた薄暗い控え室。 そこでは、人混みから逃れてきたカップルたちが、親密な距離で静かにワルツのステップを踏んでいる。
実はこの作品の背景には、ダンスをこよなく愛した画家ゾーン自身の実体験と遊び心がたっぷりと詰め込まれている。 当時のパリの舞踏会はいつも混み合いすぎて、まともにステップを踏むことすらままならなかった。彼はそんな喧騒から離れ、落ち着いて踊るために小部屋へと移動する人々の姿に惹かれ、このドラマチックで親密な場面を描き出したのだ。
前景で女性をエスコートして踊る男性は、当初はフランスの銀行家をモデルに描かれていた。しかし、権威あるサロンへ出品する直前になって、ゾーンはなんと自分自身の顔に描き直してしまったのである。 さらに後ろの暗がりには、嫉妬深げにこちらを見つめる孤独な男性(美術評論家のアルマン・ダヨ)が描き込まれており、華やかな場に潜む人間模様の明暗を見事に演出している。
光と影の対比が美しいこの傑作は、1893年のシカゴ万国博覧会に出品され、アメリカの富豪ジョージ・ヴァンダービルトによって買い取られた。 自分の手掛けた作品を我が子のように愛していたゾーンは、「絵が遠くアメリカの田舎の城へ行ってしまい、二度と会えなくなるのは悲しい」と、後に自伝の中でその別れを嘆いている。
華やかなステップと影に隠れたドラマ、そして画家の作品への深い愛情。 薄暗い部屋で踊り続ける彼らの姿は、まるで画家の記憶の中で永遠に回り続ける幻のようにも見えてくる。
内容に誤りがある場合は こちらからご報告ください
スウェーデンを代表する画家、版画家、彫刻家。初期は水彩画家として才能を開花させ、のちに油彩画へと表現の幅を広げて国際的な名声を獲得した。





_1893.webp)

