Sadko(サトコ / 水の下の王国のサトコ)

1876年

神話

きらびやかな衣装を身にまとった多国籍な人魚の姫たちが、薄暗い海底を練り歩く幻想的な光景。

ロシアの伝統的な叙事詩を題材にしたこの巨大な絵画は、主人公の商人サトコが、海の王から花嫁を選ぶよう命じられた場面を描き出している。 豪華絢爛で魅惑的な美女たちが次々と通り過ぎていくが、画面右端に立つサトコは彼女たちには目もくれず、最後尾にいる素朴なロシアの村娘チェルナヴァをじっと見つめている。

実はこの作品、画家レーピンが華やかな芸術の都・パリに留学している真っ只中に描かれたものだ。 当時の彼は、最先端の西洋文化や印象派の眩い表現に触れる一方で、異国での生活に強烈な望郷の念と疎外感を抱いていた。

サトコの前を通り過ぎる美しい人魚たちは、パリで若き画家を囲んでいた「華やかだが自分とは異なる異国の文化の誘惑」そのものだったのだろう。 それでも主人公がすべての誘惑を退け、最後に選び取ったのは、目立たないけれど見慣れた故郷の娘だった。

西洋の洗練された美に囲まれながらも、決して自身のルーツである「ロシアの魂」を見失うまいとする画家の強い決意。 幻想的で美しい海の世界に密かに託されていたのは、遠く離れた異国の地で募らせた、祖国への熱烈な愛だったのだ。

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19世紀後半のロシア写実主義を牽引した画家であり、「移動派」を代表する中心的な人物。

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