Ophelia(オフィーリア)
1910年
気高いブルーと金のドレスを纏い、死を象徴するヤナギの木に寄りかかる一人の女性。
その髪と衣服には、死や眠りを意味する鮮やかなケシの花と、純愛を示すヒナギクが飾られている。
シェイクスピアの悲劇『ハムレット』に登場する、狂気に陥り水死するヒロイン、オフィーリアを描いた場面だ。
でも実は、この絵に描かれている彼女は、私たちがよく知る「か弱いオフィーリア」とは全くの別人である。
当時、多くの画家たち(そして若き日のウォーターハウス自身)は、彼女を「純白のドレスを着た、正気を失い歌いながら水に流される儚い少女」として描くのがお決まりだった。
しかし1910年、晩年に差し掛かっていた彼は、数十年にわたるその伝統を突如として打ち破る。
彼がキャンバスに描き出したのは、虚ろな目をした狂気の少女ではない。
頬を紅潮させ、絶望のなかにも明確な決意を宿した強い眼差しでこちらを見つめる、成熟した大人の女性の姿だった。
格式高いブルーのドレスの裾からは、彼女の内に秘められた衝動や情熱を暗示するように、鮮やかなオレンジ色の裏地が覗いている。
背後の橋では二人の女性が驚いたように彼女を見つめているが、彼女は迷うことなく水辺へと足を踏み出している。
この絵の中で彼女は、運命や狂気に流されて「うっかり」溺れるのではない。 自らの意志で死という悲劇を選び取ろうとする、張り詰めた覚悟を持っているのだ。
数々の神話や文学のヒロインを描き続けてきた老画家が、最後にたどり着いたオフィーリア。
それは、単なる悲劇の犠牲者ではなく、自らの絶望と運命に真正面から立ち向かう、生々しいまでに力強く気高きひとりの女性の姿だった。
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ラファエル前派の精神を色濃く受け継いだイギリスの画家。イギリス人の画家の両親のもとローマで生まれ、ロンドンの王立芸術院(ロイヤル・アカデミー)で学んだのち、自身…


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