Lamia(ラミア)

1905年

後期ラファエル前派神話

森の中で、甲冑に身を包んだ兵士にすがりつくようにして、青白い腕を差し出す若く美しい女性。

相手を情熱的に見つめる瞳と、はらりと落ちた薄衣が、甘美なロマンスの始まりを思わせる。

でも実は、彼女の足元をよく見ると、玉虫色に光る「蛇の抜け殻」が脱ぎ捨てられ、足にまとわりついている

そう、彼女はか弱い乙女などではない。男を誘惑して破滅へと導く、ギリシャ神話の恐ろしい蛇の魔物「ラミア」なのだ。

19世紀の詩人ジョン・キーツの物語詩にインスピレーションを得たこの作品。

本来は血をすする恐ろしい怪物として語られるラミアだが、ウォーターハウスのキャンバスの上では、愛する人間の青年(リキウス)と結ばれるために神に懇願し、人間の女の姿へと変身した「恋に身を焦がす一人の女性」として描かれている。

彼女は己の魔性で男を誘惑し、男はその抗いがたい美しさに魅了される。

彼が武器(槍)を落としているのは、彼女の前に完全に無防備になり、男としての力や理性をも失ってしまったことを暗示している

しかし、魔法で得た人間の姿と偽りの幸せは長くは続かない。やがて正体を見破られた彼女は悲鳴とともに消え去り、残された男もまた絶望の中で命を落とすという残酷な悲劇が待っているのだ。

死の危険を孕んだ「ファム・ファタール(魔性の女)」でありながら、どこか脆く、ひたむきに愛を乞うようなラミアの瞳。

当時の批評家が「苦難を通じた魂の開花」と評したように、ウォーターハウスが描こうとしたのは、単なる恐ろしい怪物ではなく、決して叶わぬ愛を渇望し、抗えない運命の中でもがく切実な姿だった。

男を破滅させる毒と、愛を求める純粋さ

その両方を併せ持つからこそ、彼女はこれほどまでに美しく、見る者の心を狂わせるのかもしれない

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ラファエル前派の精神を色濃く受け継いだイギリスの画家。イギリス人の画家の両親のもとローマで生まれ、ロンドンの王立芸術院(ロイヤル・アカデミー)で学んだのち、自身…

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