Woman with a dagger(短剣を持つ女)
1870年
神話
鋭い短剣を手にし、どこかミステリアスな雰囲気を漂わせる女性の姿。
何か恐ろしい事件のヒロインか、復讐に燃える歴史上の人物のように見えるかもしれない。 でも実は、この女性の正体は「人魚」である。
ロシアの伝統的な叙事詩を題材にした巨大な絵画『水の下の王国のサトコ』を描くために、画家レーピンが制作した油彩の習作(エスキース)の一つなのだ。
物語の中で、主人公の商人サトコは海底の王から数百人もの多国籍な人魚の姫たちを引き合わせられ、その中から花嫁を選ぶよう命じられる。 短剣を持つこの異国情緒あふれる女性も、サトコの目の前を通り過ぎる「魅惑的な候補者」のひとりとして描かれた。
当時、若きレーピンは華やかな芸術の都・パリに留学していた。 しかし彼は、最先端の西洋文化の真っただ中にいながらも、強烈な望郷の念と異国での疎外感に苦しんでいた。 短剣という物騒なアイテムを携えたこの女性は、当時のレーピンがパリで直面していた「美しくも危険で、どこか自分を拒絶するような異文化の誘惑」を体現しているのかもしれない。
圧倒的な美貌と危険な香りを放つ彼女たちを前にしても、物語の主人公サトコは決してなびかず、最後尾にいた素朴なロシアの村娘を選び取る。 このスリリングな習作は、華麗な異国の誘惑を退け、自身のルーツである「ロシアの魂」を愛し抜こうとした画家の「静かなる決意」の裏返しなのだ。
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19世紀後半のロシア写実主義を牽引した画家であり、「移動派」を代表する中心的な人物。

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