The Lament for Icarus(イカロスの哀悼)
1898年
神話新古典主義
黄金色に輝く夕日に照らされた海岸の岩場。
そこに横たわる日に焼けた若者の亡骸と、彼を抱きかかえ、竪琴を手にして深く嘆き悲しむ海の精霊(ニンフ)たち。
蜜蝋で作った翼で大空を舞い、父の忠告を無視して太陽に近づきすぎたために墜落したギリシャ神話の青年、イカロスの最期を描いた神話画である。
しかしよく見ると、本来なら太陽の熱で溶け落ちて無残な姿になっているはずの翼は、なぜか極彩色の美しい姿のまま、彼を優しく包み込むように残されている。
実は、画家ハーバート・ジェームズ・ドレイパーがこの大作を手がけた1898年は、彼が自身の父親を亡くした悲しみの年でもあった。
イカロスの物語は通常、過剰な野心や若さゆえの「愚かな失敗」への警告として語られることが多い。しかしドレイパーは、無残に空から堕ちる瞬間ではなく、十字架から降ろされたキリストの死を悼む「ピエタ」にも似た、静かで崇高な場面を選び取った。
沈みゆく太陽の光が、一日の終わりと命の儚さを静かに告げている。
彼が愚かな失敗の結末を、あえてこれほどまでに美しくロマンチックに描き出したのは、大空へと挑んだ若き命への手向けであり、失われた愛する存在に対する画家自身の切実な祈りだったのかもしれない。
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ヴィクトリア朝後期から20世紀初頭にかけて活躍した、新古典主義を代表する画家。










