The Moon and the Stars(月と星)
1902年
漆黒の宇宙空間にふわりと浮かび上がる、四人の優美な女性たち。 内側から発光するかのような神秘的な光に照らされた彼女たちは、時の流れに沿って「宵の明星」「月」「北極星」「明けの明星」を擬人化した姿である。
ミュシャといえば、華やかな植物や装飾的な枠に囲まれた明るい女性像を思い浮かべる人が多いだろう。 しかし、彼の装飾パネルの最後のシリーズとなった本作では、おなじみの豪奢な三日月や背景の飾りなどはあえて取り払われている。
当時、神秘主義に深く関心を抱いていたミュシャは、単なる「美しい室内装飾」の枠を超え、天体というテーマのより深い意味を探求しようとしていた。 画面全体のトーンをあえて落として星の光の神秘性を際立たせ、女性たちのポーズもこれまでの官能的なものから、瞑想にふけるような静謐でドラマチックなものへと変化している。(例えば「月」のパネルでは、女性が口元を隠して鑑賞者に静寂を求めるような仕草を見せている。)
また、ひっそりと画面の周囲を縁取る植物にも、彼の深い洞察力が込められている。 夕刻を告げる鐘に似たカンパニュラ(宵の明星)、深い眠りを象徴する白ケシ(月)、高山に咲く星の形をしたエーデルワイス(北極星)、そして新たな一日の栄光を讃える月桂樹(明けの明星)。
華やかなパリのポスター画家という顔の裏側に潜んでいた、ミュシャの哲学的でスピリチュアルな精神性。 暗闇のなかで静かに光を放つこの連作は、彼が見えない宇宙の神秘を描き出そうとした、深く美しい祈りのような作品である。
内容に誤りがある場合は こちらからご報告ください
チェコの南モラヴィア地方出身で、アール・ヌーヴォー様式を代表する世界的芸術家。












