Hofball in Wien(ウィーンの宮廷舞踏会)
1900年
まばゆい光の下、華やかなドレスや軍服に身を包んだ何千人もの人々が集うウィーンのホーフブルク王宮。
新世紀の幕開けを祝うこの舞踏会の中央には、威厳に満ちた老皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の姿が描かれている。
でも実は、この絵が描かれた1900年当時、皇帝とハプスブルク帝国は深い悲しみのどん底にいた。
唯一の皇太子ルードルフを衝撃的な心中事件で失い、さらには最愛の妻である皇妃エリザベートまでもが1898年に暗殺されたばかり。
実はこの日は、彼女の死後、喪に服していた宮廷が初めて開催した宮廷舞踏会(ホーフバル)だったのだ。
多民族国家であった帝国内部でも対立が深まり、長年続いた帝国の体制は確実に崩壊へと向かい始めていた。次々と襲いかかる個人的な悲劇と国家の危機の中で、老皇帝はただひたすらに「帝国の威信」という君主の責務を果たし、権威ある儀式を執り行い続けていた。
悲しみと帝国の黄昏の中で画家ガウゼが切り取ったこの宮廷の姿は、ただ暗く沈んでいるどころか、驚くほどまばゆく輝いている。
それは終焉が近づく帝国が放った、美しくも儚い「最後の輝き」であり、絶望の淵にあってもなおワルツに乗せて伝統を保とうとする、ひとつの時代の切実な幻想だったのかもしれない。
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ドイツのクレフェルトに生まれ、オーストリアのウィーンを中心に活躍した画家、イラストレーター。













