Paris, Boulevard at Night(パリ、夜の大通り)

1893年


夜の闇が下りたパリの大通り。 ガス灯や店舗から漏れる温かな人工の光が、行き交う人々や馬車の影をぼんやりと浮かび上がらせる。

19世紀末、近代化が進むパリは「光の都」として、夜の風景を一変させつつあった。 労働者階級に生まれ、近代都市の建設現場や過酷な工場地帯など、社会の底辺で働く人々の姿を厳しい眼差しで見つめ続けていた画家マクシミリアン・リュス。 しかし日が沈むと、彼はこの都市が見せるもう一つの素顔、闇の中にまたたく人工照明の魔法にすっかり魅了された。

当時の彼は、友人であるシニャックらと共に「新印象派」として点描(分割主義)の技法を探求していた時期にあった。 だが、彼の点描は決して計算し尽くされた冷たいものではない。 暗がりの中に浮かぶオレンジや黄色の光、そしてそれに照らされる青や紫の夜の闇。相反する色彩の点を感情の赴くままに並べることで、彼は夜の街のざわめきや、街灯がもたらす独特の詩情、光の鼓動を見事に表現している。

社会の矛盾や貧困と向き合い、のちに政治犯として投獄されるほどのアナキストでもあった彼が描いたこの夜景は、驚くほど幻想的でロマンチックな輝きを放っている。 昼間の過酷な現実を知る男だからこそ、光に彩られた夜のパリが、一時の夢のように美しく見えたのかもしれない。

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フランス

マクシミリアン・リュス

1858 – 1941

フランスの新印象派(ネオ・印象派)を代表する画家。パリの質素な家庭に生まれ、初期は版画職人の見習いとして技術を磨いた。

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