Courtship(求愛)
1903年
陽光が差し込むゴシック様式のアーチと、静かな中庭。 輝く甲冑に身を包んだ騎士がひざまずき、情熱的な愛を象徴する赤いバラの枝を乙女に捧げている。 流れるようなドレスをまとった彼女は、興味と少しの戸惑いが入り交じった視線を静かに投げかけている。
絵に描かれたような、完璧に理想化された中世のロマンス。 でも実は、この絵が描かれた1903年当時、画家レイトンを取り巻く美術界は大きく変化しつつあった。
20世紀に入り、モダニズムや新たな芸術運動が台頭する中、彼が描くような中世の騎士道やロマンティックな歴史画は、批評家たちから徐々に「時代遅れ」として片付けられようとしていたのだ。
さらに、彼自身も決して恵まれたエリート画家ではなかった。 わずか2歳の時に画家の父を亡くし、母の強い希望で15歳の頃から茶商人の事務所で働くことになったレイトン。 彼は昼間は帳簿や出荷書類に囲まれて働き、密かに貯めた給料で夜間の美術学校に通うという、苦労に満ちた青年時代を送っていたのである。
美術界の主流から外れ、「目立つ部外者(アウトサイダー)」という立場に置かれながらも、彼は決して自身の甘美な作風を変えなかった。 彼が絵を描いたのは、気難しい批評家たちのためではなく、自分と同じように退屈で厳しい日常から抜け出し、美しい物語の世界に想いを馳せたいと願う「普通の人々」のためだったからだ。
急速に近代化が進む無機質な時代において彼が描き出した、温かく親密な騎士道の情景。 ひざまずく騎士が差し出す赤いバラは、失われゆく「純粋な愛と美」を信じ続けた画家自身から、現代を生きる私たちへ向けられた永遠の贈り物だったのかもしれない。
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