Boyhood Portrait / W. A. Mozart in formal attire(少年時代のモーツァルト)

1763年


ライラック色の豪奢な宮廷衣装に身を包み、鍵盤の前に立つ一人の少年。

幼いながらも、どこか大人びた厳かな雰囲気を漂わせている。彼が着ているのは、その才能に驚嘆した女帝マリア・テレジアから贈られた、本物の皇族(大公)のお下がりだった。

でも実は、この肖像画の制作プロセスは少し風変わりだった。

画家はまず、豪華な衣装や背景、楽器だけをキャンバスに描き上げた。 少年がその顔を描き込んでもらうためにポーズをとったのは、絵の土台がすっかり完成した後のことだったのだ。

なぜなら、この絵が描かれた1763年、彼は父に連れられ、およそ3年半にも及ぶ過酷なヨーロッパ大演奏旅行へと旅立つ直前だったからだ。

多忙なスケジュールの中で、ゆっくりとモデルになる時間はなかったのだろう。

そのため、この絵を細かく観察すると、奇妙な違和感に気づく。立派な衣装のバランスに合わせて顔をはめ込んだ結果、額や顎の比率が7歳の子供のものではなく、すっかり大人の骨格になってしまっているのだ。

さらに、鼻の形が不自然に歪んでいたり、左右の目の焦点が微妙に合っていなかったりと、後から急いで描き足したような不自然なミスがいくつも残っている。

完璧な「神童」の姿を世間にアピールしたかった父の野心。

そして、その途てつもない期待を小さな背中に背負い、馬車に揺られて世界へと旅立とうとするモーツァルト。

少しちぐはぐでアンバランスなこの肖像画は、「天才」という大人の作った枠組みに押し込まれようとしていた、
ひとりの少年のいじらしい真実の姿を、今も私たちに伝えているのかもしれない。

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